第一話: ところで動物学ってどんなこと勉強するの?~タスマニア大学での生活~
自己紹介でもチラッとご紹介したように、僕はオーストラリアのタスマニア大学と言ういくぶんマニアックな場所で、動物学と言ういくぶんマニアックな分野を専攻しました。
この記事からいくつかは、僕がどんなキッカケでそこに辿り着き、そこでどんなことを勉強したかをシリーズ的な感じで何回かに分けてお話しようと、そういった趣向でございます。
これまた長くなりそうなお題を選んじまったなぁ。。。
だいたいこれ需要あんのかな。。。(弱気)
とにもかくにも、Here We Go!! (マリオカート風に)
第一話: そもそもなんで動物学を??
まぁ気になりますよね、これ(笑)
だって就職口少なそうだし、日本でも一般的ではないし、そもそも何なのかもよく分かんないし。。。
それでも動物学を専攻しようと思ったキッカケはなんなのか。
それは僕が4歳、まだケツの青いガキだった頃に遡ります。
当時ワタクシはまぁまぁ悪い小児喘息を患っておりました。
どれぐらい悪いかというと、
「あらーッ!今月は4回も幼稚園に行けまちたねー!♡」ってぐらい悪かったようです。
恐らく両親を始めいろんな大人に心配を掛けまくった手の掛かるガキでした。
つまり入院しておりました。
4歳という暴れん坊将軍真っ盛りの時期に入院ってのはもう、暇で暇でしょうがないんでしょうね。
外にも遊びに行けないし、病院内でもいつでも遊べるわけでもない。
そこで何をして楽しんでいたかというと、
これです。動物図鑑。
もうね、読みふけりました。
図鑑の虫です。
当時は「マンドリル」とかいうレアなサルを知っている神童として院内で有名になり看護師さんなどに褒められるのが非常に嬉しかった記憶があります。
あと、オウチでの時間はもっぱらアンパンマンかライオンキングを見て過ごしていました。
ライオンキングに至っては、セリフの一字一句を完コピするほどのハマり具合でした。
そう、どこまでも神童でした。
とまぁ、幼少期の僕はマンドリルから始まりライオンキングを通して、動物や昆虫や恐竜そして自然という「生物沼」にドップリとハマっていくのでした。
余談なのですが、小学生から中学生にかけて、毎年夏は父や友人と近所の雑木林へクワガタやカブトムシを採りに行っていました。
本当に楽しい時間で、また日本に帰ったら行きたいなぁと大人になった今、常々思っております。
動物以外の小中高の思い出は簡単にまとめるとサッカーしかないので割愛させていただきます。あ、でも中学と高校ではキャプテンでした。(まとまった)
高校2年の時、理系クラスだった僕は生物or 物理という選択を迫られます。
当然「物理とか無理ゲーだし、生物一択っしょ!」と考えていた僕ですが、教師の「生物なんか勉強しても大学も就職もないから物理を取れ」というクソみたいな脅しに分かりやすくビビり、物理を選択をしました。
あの教師、許しがたい。。。
案の定物理はいつも赤点ギリギリでした。
もはや神童でも何でもありません。
だって意味分かんねぇもんあれ。
そして高校3年になり、進路を考える時期になりました。
そこで、僕は家族との食卓で以下のような話をしました。
「交換留学とかできる大学に行きたいでやんす☆」
日ごろからちょくちょくそのような発言をしていたように記憶しています。
というのも、私の父は船乗りで昔は一年の半分以上は世界のどこかの海の上という人でした。(漁師ではない模様)
その影響もあり、海外に漠然とした憧れがあったようです。
そして僕がそのように進路の話を食卓で家族とした時に、
その父が、
何気なく、
冗談のつもりで、
ポロッと、
「そんなに海外に行きたいなら海外の大学に行けば?」
当時からアホな僕は、「あ、その手があったかー!」とスッカリ間に受け、
留学エージェントを探し、
どうせ海外行くなら好きなことを勉強しよう!ということで動物学な有名な大学を探し始めました。
とりあえず、相変わらず金と手間の掛かる息子で申し訳ないかぎりです。(笑)
恐らく父も自分が勧めてしまった手前、完全に引っ込みがつかなくなっちゃったんだと思います。
そして、いくつかの候補の中から面白そうな動物の研究をたくさんしていてフィールドワークとかが盛りだくさんのオーストラリアのタスマニア大学を選んだというわけでございます。
あんまり暑くなさそうなのも良きでした。
ただこの時は多少調べてはいたものの、オーストラリアの大学がどんなところか、はたまたタスマニアがどんなところかなど全くイメージが沸かず、僕ももちろんですが、きっと両親もかなーり不安だったと思います。
☝ここです。
タスマニア大学での暮らしについてはまたシリーズ続編で詳しく書きます!
とまぁ、タスマニア行きが決まってからは周りは大学受験に向けて猛勉強してる中、当時学年平均以下だった僕のポンコツ英語を上達させるべく、これとかこれとかをひたすらやってました。(懐かしい)
そして、センター試験と無縁になった僕は、担任の先生からの執拗な
「おい、センター模試受けろよ」に対して
「あ、お金振り込むの忘れましたー。」という作戦を3回ぐらい使いました。
でも高3の最後には学年平均以下だった英語がちゃんと学年2位までなったので許してほしいとこですね。えぇ。(1位は帰国子女)
こうして僕はビザの手配に苦戦したり、ホストファミリーの決定にワクワクしながら、着々とタスマニアへ旅立つ準備を進めていったのでした。
はい!というわけでシリーズ第一話では、僕がタスマニアへ旅立つまでをササッとまとめてみました。
タイトルに反して、タスマニアでの生活についてはまるでノータッチになってしまってマジですみません。(笑)
もっとここを詳しくしりたい!とかそういう感想があればぜひコメントでお願いします。
でも、このシリーズがこれから動物学を学びたいと思っている人や、海外大に進学したい人の役に少しでも立てれば幸いです。
それでは続編をこうご期待!!
タスマニア大学でのウォンバット疥癬研究プロジェクト
オーストラリアにいるズングリムックリでかわいいウォンバット。
今彼らは大変な病気に苦しんでいます。
その名もSarcoptic mange、和名:疥癬(かいせん)
―ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)による感染症。
感染した個体は強烈な痒み、皮膚の過角化(乾燥しひび割れそして厚くなる)、そしてひっかき傷からの第二感染症などに襲われる。
また、ウォンバットの場合、皮膚の過角化は目の周辺にも起きやすく、その場合は視力を奪われエサや水を見つけることができず多くの場合は死ぬ。
この記事では、タスマニア大学でのウォンバット疥癬の治療薬の開発の研究プロジェクトについて書いていこうと思います!
ちょっと難しい内容になると思うけど、マニアックな人はぜひ読んでもらえると嬉しい。
僕もできるだけ分かりやすく、読みやすく書きますので!
それではどうぞ!!
以前僕が書いた「ウォンバットの苦しめる病気」という記事を読んでくれた方はご存じかと思いますが、一応この病気の問題点をササッとおさらいしましょう!
- 疥癬を引き起こすヒゼンダニは気温や湿度などの条件のそろった環境では2~3週間宿主無しで生きられる。
- ウォンバットの巣穴はまさにその環境で、個体間で巣穴を共有することで感染が広がる。
- 既存の治療薬サイデクチンは効果持続期間が1週間のため複数回投薬する必要がある。
- 野生の環境で全個体に定期的に複数回の投薬するのは不可能。
- つまり、一度の投薬でダニを完全に駆除できる長い効果持続期間を持つ薬が必要。
こんな感じです。
wombat-suki-life.hatenablog.com
そこで現れたのが我らが希望の星、
ブラベクト!!!
このブラベクトはペット用の寄生虫駆除剤で、この液体を体の表面にポチョンと一回落とすだけで効果が3か月持続することがイヌやネコで実証されています。
マジで希望の光です。
ってなわけで始まったのが僕のプロジェクト!
「The Safety and Pharmacokinetics of Bravecto in bare-nosed wombats」です!
はて?そう言われましてもよく分かりませんなぁ。。。
という方がほとんどだと思います。
プロジェクトの目的を簡単にまとめると
- ブラベクトのウォンバットへの安全性の確認
- ブラベクトのウォンバット内での薬物動態の調査
です。
このブラベクト、元々はペット用として開発されて薬であり、イヌとネコ以外への効果も確認されているもの、もちろんウォンバットにおいては効果はおろか安全性も確認されていません。
もしかしたら末恐ろしい副作用があるかも。。。
と、言うことで、疥癬撲滅のためにそれを確かめよう!というプロジェクトであります。
安全性の確認方法としては、健康なウォンバットにブラベクトを一度だけ投薬。
体重・行動・血液検査を投薬前と投薬後の3か月間定期的に記録し、その実験期間中にウォンバットの健康状態に変化がなければオッケーというものです。
あと薬物動態っていうのは、投薬されてからどれぐらいの量の薬がちゃんと動物の体内に吸収されたか、また体外に排出するのにはどれぐらいの時間が掛かるかなどを調べる実験です。
これは動物の種類や薬によって代謝速度や薬の分解のされ方に違いがあるため、その薬がその動物の体内でどれだけ効果を持続するかを見るのに非常に大事な調査なんですねぇ。
なので、薬の血中濃度の変化を調べるためにも定期的に採血をします。
ウォンバットの採血はホバートにある野生動物専門の動物病院付き保護施設のBonorong Wildlife Sanctuaryの獣医さんたちに手伝ってもらいました。
余談ですが、採血の途中にもいろんな動物が動物病院に運ばれてきました。
ワラビー、ウォンバット、カモノハシ、ハリモグラ、鳥類、そしてヘビまで!
獣医さんって本当に人間以外は何でも診なきゃいけないんだからすげえよなぁってひどく感動しました。
さぁ、話を戻しまして!
ちょっと専門的な内容だったにも関わらず、我慢してここまで読んでくれた人ありがとう!
やっとウォンバットが出てくるよ!(ワーイ)
今回このプロジェクトに研究してくれたウォンバットこの5頭!
3頭はBonorong Wildlife Sanctuaryから、もう2頭はZooDoo Wildlife Parkからお借りしました。
唯一の男の子Lourieってのがもう暴れん坊でねぇ。。。
毎朝動物園で彼を捕獲するのにめちゃくちゃ苦労しましてね。えぇ。
彼のまともな写真というと、もうこの麻酔で爆睡してる写真しかないんすよ(笑)
かたやSassyは名前を呼べば後ろをテチテチ付いてきてくれるぐらい可愛いしとってもいい子です♡
下の写真のような感じでLourieとSassyは採血の度にSUVのトランクで動物病院へと輸送させていただきました。
狭くてごめん。
実験の流れとしては、
‐犬に使用する際と同量のブラベクトを一度だけ投与する。
‐薬物動態調査と血液検査のために採血する。(3回/週→1回/週→2週間に1回:3か月間)
‐体重測定と行動観察を採血と同頻度で行う。(ウォンバットの健康状態のチェックのため)
こうしてたくさんの人とたくさんのウォンバットに協力してもらいながらこのプロジェクトは進んでいきました。
そしてそして、
結果発表――ッ!!!!(浜ちゃん)
まずは実験期間中のウォンバットの健康状態から!
ブラベクトを投与する前とブラベクトを投与してからの3か月間、5頭共行動にも血液検査の結果にもほぼ変化が見られず、ビシッと健康でいてくれたことが分かりました!
特に体重に関してはどのウォンバットも増加傾向にあり、まだまだすくすくと成長していました(笑)
いいぞォ、いっぱい食ってデッカくなってくれぇー!
問題は薬物動態調査の結果です。
この実験では犬と同様の投与量をウォンバットに使用しました。
なので、だいたい犬と同様の薬物動態カーブになると予想していました。
ところがどっこい!
比べてみると犬の1/1000程度の薬しか吸収されてない。。。!!!
いや、投与量は間違えていない。。。なぜだ。。。!!
考えられる原因は、、、
ウォンバットの厚い皮膚と脂肪です。
その厚い皮膚と脂肪に邪魔をされ、犬と比較するとブラベクトが体内に効果的に吸収されなかった。ということです。。。
いやはや、まさかここまでとは思いませんでした。。。
これでは犬猫と同じような治療効果はウォンバットには期待できません。
ただ悪い結果ばかりではありません!
分析の結果、ブラベクトは犬猫と比べてウォンバットの体内の方が長く滞在するということが分かりました。
これはウォンバットの非常に低い代謝が関係していると思われます。
つまり、効果が実証されれば犬猫より長い効果持続期間が期待できるのです。
いいぞォ!
まとめると
‐ブラベクトはウォンバットにとって安全
‐しかし必要量の1/1000程度しか吸収されない
‐ブラベクトはウォンバットの体内で充分に長く滞在する
ということでした。
こうして僕のプロジェクトは終わりました。
あ、でも安心してください!
このあと僕の所属していたスコット・カーバー研究室のメンバーがしっかりこのプロジェクトを引き継いでくれ、3倍の投与量で同じ実験をしてくれました。
この投与量はイヌとネコでも副作用が確認されておらず、僕の実験結果からしても安全であるという推測の元に行われ、安全確認も薬物動態調査も期待通りの結果を得ることができました。
現在は実際に疥癬に感染した飼育個体でブラベクトの効果を実験している段階です。
3週間でダニを完全駆除し3ヶ月間効果が持続するこの薬を野生個体へ使用できれば多くの野生ウォンバットの命が救われることは間違いありません。
長くなっちゃってごめんなさい。
でも読んでくれた人はとってもありがとう!
このブラベクトのプロジェクトについてはこのブログでも進捗報告はしていくので楽しみにしていてください!!
それではまた!!!
ウォンバットを苦しめる病気
この記事では僕の研究トピックである「ウォンバットの病気を引き起こすダニの弱点を探そうぜ!」プロジェクトの、そのウォンバットの病気に関して書いていきたいと思います。
人によってはショッキングな内容かもなのでご了承ください。
それではどうぞ!
オーストラリアにいるズングリムックリの可愛い動物ウォンバット。
しかしこのウォンバット、今大変な病気に苦しんでいるんです。
Sarcoptic mange、和名:疥癬(かいせん)
―ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)により引き起こされる感染症。
感染した個体は強烈な痒み、皮膚の過角化(乾燥しひび割れそして厚くなる)、そしてひっかき傷からの第二感染症などに襲われる。
また、ウォンバットの場合、皮膚の過角化は目の周辺にも起きやすく、その場合は視力を奪われエサや水を見つけることができず多くの場合は死ぬ。
この疥癬という病気、現在までに人間を含めた100種類以上の哺乳類で報告されています。しかし、その中でも特に一番大きな影響を受けているのがこのヒメウォンバットだと言われています。
どれぐらいの影響かというと、例えばタスマニア州にあるナラウンタプ国立公園。以前は「ウォンバットパラダイス」と呼ばれるぐらいたくさんのウォンバットが生息していました。
しかし、疥癬のアウトブレイクが確認されてから数は激減。10年ちょっとで国立公園内の個体数の95%が死に、最後に確認されたのは3頭のみになってしまいました。もしかしたら今はもう一頭もいないかもしれません。
これは疥癬に感染したウォンバットの写真です。
毛が抜け、むき出しになった皮膚がただれているのが分かります。
本来ウォンバットは夜行性なのですが、毛が抜けてしまい体温調節がうまくできなくなるせいでより暖かい昼間に活動的になる個体が多いです。
このように、疥癬はウォンバットの行動も大きく変えてしまいます。
また、感染と闘うためにより多くのエネルギーを必要とするため、普段ウォンバットは水分を主食である草から摂取するにも関わらず、水を探して長い距離を移動します。そしてそこで更に他の個体に伝染するのです。
もはやダニに操られたゾンビといっても過言ではないかもしれません。。。
しかしなぜ、ウォンバットだけこんなに被害が大きいのか?
ヒゼンダニはある気温や湿度などの条件が揃った環境では宿主無しで2-3週間生きることができると言われています。そしてウォンバットの巣穴はまさにその「条件の揃った環境」であると考えられます。特に大量の草が敷き詰められている寝室は湿度も保たれておりダニにとって非常に過ごしやすい環境でしょう。
そしてもうひとつの原因はウォンバットの「巣穴を共有する」という習性にあります。ウォンバットの縄張り意識はそこまで強くなく、他の個体が掘った巣穴を使うことがよくあります。
つまり、感染した個体が使用した巣穴にはヒゼンダニが住み付き、その巣穴を健康な個体が使用することで感染が広がるといった仕組みです。
きっとここまで読んでくれた人たちの多くは思ったでしょう。
「治療薬はないのか?」と。
もちろんあります!
サイデクチンという薬は、オーストラリアでウォンバットの疥癬を治療するのに最もメジャーな寄生虫駆除薬であり、現在国内でウォンバットへの使用が認可されている唯一の薬です。
なんとこの薬一回投与すると効き目が1週間持続し、あっという間にダニを駆除してくれるすごい薬なんです。
よぉーし!それじゃあ、疥癬で苦しんでいる野生のウォンバットたちをすぐに治療しに行こう!!ってなりますよね?
それがねぇ、そうもいかないんですよォ。。。
この薬の効果持続期間は1週間。
ヒゼンダニが宿主無しで生き延びられるのが2∼3週間。
分かりますね?
感染したウォンバットには複数回繰り返しこの薬を投与しない限り、ウォンバットの身体そして巣穴からダニたちを完全に駆除することはできないのです。
そして、野生の環境では同じ個体に複数回都合よく出会い、そして個体群の全個体に確実に薬を投与するのはほぼ。。。
不可能。
これが現状です。悲しいですが。
この打開策として、ブラベクトという別の薬の使用が現在は検討されています。
このブラベクトは一回の投与で効果が3か月持続することがイヌやネコで実証されています。
マジで希望の光です。
ちなみにブラベクトのウォンバットへの安全性を確認したのが僕の研究プロジェクトでした。
そして、現在タスマニア大学研究チームがウォンバットでの効果を検証しているところです。
早く効果が確認され認可されるといいなぁ。
いかがでしょうか。
きっとこれを読んでいただいた方の中にはこの病気のことを知らなかった方もいるでしょう。
ただ、残念ながらウォンバットは疥癬と病気に苦しみ、現時点では野生個体群から疥癬を撲滅するのは不可能ということを知っていただいたと思います。
学者の端くれとして多くの人にこういったことの認知を広げていくことも使命のひとつだと感じています。
下のリンクはタスマニア大学のウォンバット疥癬の研究プロジェクトをサポートをしてくれているCedar Creek Wombat Rescueのホームページです。
もし、オーストラリアには行けないけど力になりたいという方がいたら募金してあげてください。
https://www.cedarcreekwombatrescue.com/donations/
いつも読んでくれてありがとう!
悲しい話題ばかりじゃなく、明るい話題を僕も届けられるように頑張るので待っててください!
ではでは。
こちらもどうぞ!↓
ウォンバットという生き物 (後編)
さぁ、前編ではウォンバットはコアラやカンガルーと同じ有袋類の仲間であることと、「そんなに掘る?」ってぐらい穴掘りをすることに焦点を当ててみました。
後編の内容はこちら!
- ウォンバットの最大の武器
- なぜそんなに四角い?ウォンバットのフンの謎。
の2本立てです!
それではどうぞ!
- ウォンバットの最大の武器
なんだと思います?
穴掘りのための鋭いかぎ爪?大きな体?鎧のような脂肪と筋肉?
正解は、、、
「おしり」です。
もう一度言います。
「お、し、り!」(大声)
ウォンバットのおしり、触ったことある人は分かるかと思いますが、メチャクチャ硬いです。ウォンバットのおしり触ったことがない人で、ウォンバットのおしりを触ったことがある人が周りにいたら聞いてみてください?「そんなに硬いの?」と。
え?身近にそんな人いるわけないだろって?
じゃじゃじゃあ、僕がお教えいたしましょう!
ズバリ!どれぐらい硬いかと言うと、鉄とまでは言わないけどかなりしっかりしたテーブルぐらいには硬いです!(結局分かりづらい例え)
例えば天敵のディンゴやタスマニアデビルの牙なんてもう屁でもありません。
何故かって言うと、厚さ6㎝にもなる軟骨のような物で覆われているんですね。おしりが。
しかもおしりに神経があまり通ってないのでそんなに痛くもありません。ちょっと毛がハゲるぐらいで済みます。
まぁね、おしりが硬いぐらいなら、「あら、おしりなの?武器という割には可愛いわねぇ♡」と思う人もいらっしゃるでしょう。
だがしかしBUT!!
おしりを使った敵の倒し方が、あまりにも、あまりにも、、、
エグすぎるんです。。。
例えば天敵であるタスマニアデビルがウォンバットをエサにするために巣穴に入ってきます。
このように敵が迫ってくると、ウォンバットはお尻をふたのように使い巣穴の入口を塞ぎます。
それでタスマニアデビルが諦めればいいのですが、諦めない場合は体勢を低くしてタスマニアデビルを背中の方へ誘います。
そしておしりの上の方に来たタスマニアデビルの頭をその硬いおしりを使い巣穴の天井に向けてぶつけ、頭蓋骨を粉砕するのです。。。怖い。。。(ドン引き)
実際にたまに頭蓋骨を砕かれたタスマニアデビルの死体がウォンバットの巣穴の前で見つかることもあります。
なので、皆さんに覚えてほしいのが、ウォンバットの巣穴を見つけても絶対に腕を突っ込んではいけないということです。
マジで、腕がへし折られます。。。
- なぜそんなに四角い?ウォンバットのフンの謎。
2019年のイグノーベル賞を「なぜ、そしてどうやってウォンバットは四角いフンを作るのか」という研究が受賞しました。
見てくださいこれ。
めちゃくちゃ四角いでしょう?
でもこれちゃんと理由があるんです。
ウォンバットは群れでは行動せず、基本的には一人で気ままに生きています。つまり人付き合い、というかウォンバット付き合いがとても悪いんですね。
「なんとかして他のウォンバットに邪魔されずに生きられんものか」と考えた末に思い付いたのがこの四角いフンを使って縄張りをアピールすることです。
オーストラリアでハイキングに行くと分かりますが、ウォンバットのフンって本当に写真みたいに何かの上に置いてあることが多いんです。
ただ普通の丸いフンだと風などで転がっていってしまう。転がらないためにはどうすべきか、じゃあ四角いフンをしましょうという進化をしたわけですね。
うーん、斬新な発想。(笑)
なのでこの四角いフン、よく巣穴の出入口とかにもよく置いてあります。
分かりやすく言えば表札替わりですね。
「ここは僕の巣なので入らないでください。ほら、ちゃんと見て四角いフン!」
ということです。
どうでしたか?
もうウォンバットのことを知ってくれている人たちにはいい復習になっていたらいいなぁと思うし、初めて知った人たちには興味を持ってもらうきっかけになっていたら嬉しく思います。
そんな不思議な動物ウォンバットは今大変な病気で数が減っています。
その病気についてはまた長くなりそうなので別記事で!
読んでくれてありがとう!次回もこうご期待!
ウォンバットという生き物 (前編)
ウォンバットという生き物を知っていますか?
最近では日本のテレビでも特集されたりして、昔と比べると少し認知度も上がったのかも知れない。
人によっては
「あぁー!あのズングリムックリした可愛いモフモフの生き物でしょ!知ってるゥ↑↑」
ってなってるかも方もいるかと思います。
そうです。ズングリムックリした可愛いモフモフの生き物です。だいたい合ってます。
見た目はこんな感じ。
初めて見た人は
「はえー思ったよりズングリムックリでモフモフしてそうな生き物だなぁー!」
って思ってることでしょう。
そんなズングリムックリでモフモフなウォンバットという生き物を、専門家として分かりやすく、そして面白おかしく紹介していこうというのが本記事のテーマでございます。
あ、考え始めたら意外と書くことが多くなりそうなので、前編と後編に分けて、前編は
- ウォンバットは何の仲間?
- ウォンバットの穴掘り
の2つに焦点を当ててみようかと思います。
それではどうぞ!
- ウォンバットは何の仲間?
ウォンバット、大人の体調は約1メートル、重さ30㎏ぐらい。
見た目的にはビーバーとかカピバラに似てますよねぇ。
実際にYah〇o知恵袋では「近所の川を野生化したウォンバットが歩いてる!」という質問を見かけました。たぶんそれ、ヌートリアです。げっ歯類です。
でも分かるよ。確かに似てるもの。
ウォンバットはオーストラリアに住んでいます。そしてオーストラリアと言えばカンガルーやコアラが有名ですね。
そう、ウォンバットも彼らと同じようにポケットで子供を育てる「有袋類」です。
でもちょっと違うのがカンガルーなどと違って、ウォンバットのポケットは後ろ向きに付いてるんです。
なんでかって?
ウォンバットは穴を掘る最大の動物として知られています。「そんなに掘る?」ってぐらい掘ります。
もしポケットが前向きに付いてると、穴掘りの時に掘った土がポケットに入っちゃうでしょ?
それじゃあ後ろ向きに付けちゃいましょうよ、という斬新な進化を遂げました。
でもこんな風に付いてるので、子供がポケットから顔を出してるときに上からウンチが降ってきたりします。
うーーん、不器用だ。。。(笑)
まぁ紆余曲折ありながらも、ポケットがあるので有袋類の仲間です。
そして進化系統的に一番近いのはコアラです。顔、ちょっと似てるでしょ?
- ウォンバットの穴掘り
先程、ウォンバットは「そんなに掘る?」ってぐらい穴を掘ると言いましたが、もう本当にすごいです。長いものでは全長20m近くにもなり、僕らの家と同じように寝室、トイレ、台所、リビングなどなど用途に合わせたお部屋があります。
その証拠に、見てこの爪!
僕ももちろん引っ搔かれたことがあるんですが、めちゃくちゃ痛いです。ちょっと血ぃ出ましたからね。
そんなウォンバットが頑張って掘った穴ですが、結構いろいろ考えてあるんです。
例えば、こんな風に段差になっているため雨が降っても水が巣の奥の方まで入ってこないんです。だから天気の悪い日は台所に蓄えておいた草でも食べながらむにゃむにゃしてればいいのです。
あんなに不器用そうなのに意外と賢いじゃないのぉ。
しかもしかも、穴の中の温度は1年中ほぼ一定で、外の気温が極寒の0℃になろうと灼熱の40℃になろうと、だいたい15~20℃ぐらいに保たれてます。
これ結構すごくないですか?
つまりまとめると、穴掘りをする最大の動物であるウォンバットにとって、この「穴を掘る」という行動はめちゃくちゃ大事で、穴の掘り方を知らないウォンバットは野生で生きていけないのです。
どうでしょうか!ウォンバットうんちく、楽しんでもらえてるといいなぁ。
あんまり長すぎると全部読んでもらえなさそうなので、とりあえず前編はここまで!
後編ももお楽しみに!!!
wombat-suki-life.hatenablog.com
初めまして~数奇な人生を選んだウォンバット研究者の自己紹介~
ウォンバットという生き物を知っていますか?
最近では日本のテレビでも特集されたりして、昔と比べると少し認知度も上がったのかも知れない。
かと思えば、あるネット記事では「げっ歯類」と紹介されていたりして、日本ではまだまだ謎の生物というジャンルなのかもと思ったりする。
このブログは
オーストラリアでウォンバットの研究をすることになったある日本人の数奇な体験の記録である。
- 自己紹介
こんな感じでちょっとカッコよく始まりましたが、まぁブログを始めるにあたってやっぱり自己紹介をしないのはちょっとあれかなぁと思うので、最初の記事はサクッと僕がどんな人かを知ってもらおうかと考えております!
簡単な経歴から言うと、
日本で高校卒業
↓
オーストラリア、タスマニア大学(動物学専攻)
↓
タスマニア大学 大学院 (生物科学部所属)
↓
メルボルンのIT企業 (NOW!)
↓
サンシャインコースト大学 PhD (バイオメディカル部所属)
という感じでしょうか。
オーストラリアには2012年に来たので、もう8年になるのかぁ。早いなぁ。
最初にウォンバット研究を始めたのは学部3年のころ。
生物疫学(Wildlife Disease)のスコット・カーバー博士の下で、ウォンバットの巣穴内の気温と外気の気温を季節と環境ごとにくらべたプロジェクトに携わったのが始まり。真夜中の国立公園、天の川が明るく感じるぐらいの暗闇で数百匹のワラビーに囲まれてウォンバットの巣穴を探したあの夜はマジで伝説です。。。
その研究についてまた今度詳しく書きますね!
学部が終わってからは、日本の院に行くことも視野に入れいくつかの研究室訪問もしたりしました。
そんな風に悩んでる時にスコットから「ウォンバットの病気に関する良いプロジェクトがあるんだけどどうや?」と言ってもらいタスマニア大学の大学院に進みました。
院での研究は本当に楽しかった!
ホバートの動物園や獣医さんたちとコラボしたり、オーストラリアのテレビや新聞で自分のプロジェクトを特集してもらったり、車でウォンバットを輸送したり(笑)、非常に刺激的な1年半でした!
なによりもね、自分の研究がウォンバットの保護の重要な役割を担っているのが感じられた、めちゃくちゃやりがいのあるプロジェクトだったのよ。
そして、その研究について詳しくはこちら。
wombat-suki-life.hatenablog.com
そのあとはメルボルンのIT企業でしばらく働きました。というか、今も働いてます。
これはもちろん動物とは全く関係のない仕事なんだけど結果的にとてもいい経験で、自分の人生においてもとても重要な1ページだなと確信しています。
メルボルンという都会で、いろんな人種やいろんな文化に囲まれ、素敵なチームメイトにも恵まれ、それはもう良い職場です。
だがしかしBUT!
何が起こるか分からないのがこの人生!
サンシャインコースト大学がウォンバットの病気のプロジェクトの研究員を募集しているのをたまたま発見し、「いかん、やらねばいかん、、、!!」という気持ちで応募したら幸運にもオファーをもらえたという次第でございます。
ちなみにプロジェクトのタイトルは
「Controlling wombat mange by targeting scabies ligand-gated chloride channels」
内容を簡単にまとめると、ウォンバットの病気を引き起こすダニの弱点を探そうぜ!的な感じです。
あ、そうそう。今何かと話題のPCR検査とかもやったりします。
もちろんすっごく楽しみだしワクワクはしてるんだけど、スコットには「PhDをやる人はだいたい途中からPhDのことが嫌いになるよ」と脅されているので、まぁ分かりやすくビビってます。それぐらい大変なんだろうなぁ。
このプロジェクトが本格的にスタートするのは9月。それまで準備をしっかりし、病気で苦しんでいるウォンバットを救うべく、そしてドクター・ウォンバットになるべく全力で頑張っていきたい所存です。
とまぁ、本当はもっと細かく説明したい事とか、話したいことがたくさんあるんだけど、最初の記事からあんまり長すぎると誰にも読んでもらえなさそうなので、こんな感じでザックリと自己紹介を兼ねた僕の略歴をまとめてみました。
ブログってこんな感じでいいのか探り探りなので、質問や感想や要望をいただけるとまた記事が書きやすくなるのでよろしくお願いします。
読んでくれてありがとう!次回の記事もお楽しみに!
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初出掲載: 2020/07/26