とあるウォンバット研究者の数奇な人生

とあるウォンバット研究者の数奇な人生

オーストラリアでウォンバットの病気の研究をするというあまりにも数奇な人生を選んだ日本人のお話。

第四話: ところで動物学ってどんなこと勉強するの?~タスマニア大学での生活~

 

第三話ではタスマニア大学動物学科のシステムや概要をワタクシ独自の視点でザックリとまとめてみました。

そしてこの第四話以降からはこの波乱万丈奇想天外奇々怪々な僕のタスマニア大学での学部生活の記憶を更に掘り起こし、そこからいくつかのエピソードをハイライトでお送りさせていただこうと、そういった趣向でェございます。

 

さて、自他共に認める生粋の動物マニアの僕が満を持して入学したタスマニア大学。

振り返ると本当に多くのことを学び、人間としても大きく成長させてくれたとても素晴らしい場所でした。

が、もちろん、楽しいことばかりではありません。

一番ツラかったことは何か。

一年生前期の動物学の教科のひとつ。Biology of Animals。

間違いなくこれですね。

即答です。

今では笑い話だし良き思い出だけど、やっぱり死ぬほどツラかった当時ハタチの僕の地獄の4ヶ月間。

これが第四話のテーマでございます。

というわけで、第四話ッ!Here We Go!! (マリオカート風に)

 

  1. Biology of Animalsってどんな教科?

その名の通り「動物たちの生物学」です。

ここで言う「動物たち」とは、昆虫やクラゲや貝類などの無脊椎動物から爬虫類や哺乳類などの脊椎動物まで、もう本当に動くもの全てです。

その動物たちの広い意味での「生物学」、つまり分類や進化や機能をこの4か月で全てビシッと網羅しようと。

そういった教科です。

 

例えば、この3ヶ月間で解剖したものは、ミミズ、ゴキブリ、カエル、サカナ、ヒトデなどなど。

本当にいろんな生き物の内臓にご挨拶させていただきました。(コンチワー‼)

そして、解剖した生き物をスケッチし、分類のためにそれぞれの特徴を暗記/理解し、脳ミソに叩き込んでいきます。

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ヒトデの解剖のスケッチ。


その中で数々のエッセイやレポート、そしてテストを乗り越えていくのです。

はい。今思い出しても完全なる鬼畜の所業です。

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レクチャースライドの一部


ただもちろん、最高に面白くて興味深い生き物の進化や機能のこともたくさん学びました!脊椎動物のアゴの獲得の進化とか、寄生虫vs宿主の競争進化の話とか!

 

でも、それを全部ブログで書きだすと全部理解していただくのに最低でも4ヶ月は掛かっちゃうんで、この記事の後半でちょろっと書くだけにします。

 

2.その4ヶ月間の僕の生活スタイル。

当時ハタチ、オーストラリアに来て2年目の僕の英語なんて、語学学校を無事にパスしたとはいえ全くダメダメでした。

もちろん授業になんかついていけません。

案の定、100人ぐらいいるクラスの中でだんだん落ちこぼれていきます。

Practical(実習)の時も、僕だけ何をしていいか分からないなんてことは日常茶飯事でした。

そんな感じなんで、生活リズムとしては以下の通り自動的に家と大学をひたすら行き来するだけの生活になります。

平日

09:00 – 10:00 レクチャー

10:00 – 12:00 図書館でPracticalの予習

12:30 – 13:30 お弁当タイム♡

14:00 – 18:00 Practical

18:00 – 20:00 お買い物&晩御飯

20:00 – 22:00 図書館でレクチャーの復習

 

土日

10:00 – 22:00 図書館

 

ってな感じです。

ワーオ、シンプル!(笑)

 

幸いにもレクチャーは録音されているので、オンラインで何度でも聞くことができます。

あと図書館は24時間開いてます。

僕のような落ちこぼれには非常にありがたいシステムです。

 

なので、「現地の友達とホームパーティ↝バイブスぶち上げHere We Go☝☝」

みたいな楽しい留学生活はとりあえずこの時は1秒たりともありませんでした。

まぁパーティなんて行ったところで英語分かんねぇし(笑)

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夜の図書館でエナジードリンク片手にやってました。またストレスで肌がやられるんすわ。


そしてこの鬼畜期間で何よりもツラかったのが

 

EXAM 

 

つまり試験です。はい。

 

落とせば再履修(卒業が延びる)、しかも3時間にも及ぶ長期戦というえげつないプレッシャーでした。

しかも聞くところによるとクラスの7割ぐらいは落ちるとか。

いやもう無理じゃね?ってなりますよねwww

かといってここで諦めて勢いあまって帰国するわけにもいかないので必死で勉強しました。

 

その結果は。。。

 

再試。(泣)

 

点数が100点満点中45~50点の人は再試になります。それより下はFailつまり落第です。

 

再試当日、試験会場に入った時に衝撃的な事実を目にしました。

 

再試が40人以上、しかもそのほとんどがオーストラリア人。

 

「ネイティブが落とす教科をね、俺が受かるわけねーじゃん。どう考えても。」

もうすでにここで自信喪失です。

 

結果発表の日。

もう不安で不安で前日は眠れず、朝から結果発表のサイトをリフレッシュしまくってました。

そして出た文字は、、、

 

PASS

 

後にも先にも大学生活で泣いたのはこのときだけでした。

 

こうしてなんとか僕がPassできたのは以下のことのおかげです。

  • 友達の存在

これはマジでデカかったです。

Practicalとか意味不明すぎて毎回のようにノートを写させてもらったし、試験勉強もウザイくらい頼ってしまったと思います。

でも再試に受かったときは

「I’m so proud of you mate! You are a legend!」

って言ってくれました。

イイやつかよォ~。

  • 先生に質問する勇希

これ、苦手な人多いと思うんです。

でも僕はマジで全然授業に付いていけてなかったので、質問するために死ぬほど先生のオフィスに突撃してました。

ちなみに、この先生の中に今後ウォンバット研究でお世話になるスコット・カーバーがいるのですが、ちょっと前に

「僕が一年生の時にセミの羽について質問しに行ったの覚えてる?」

と聞いたところ

「覚えてないwww」

とのことでした。

いいんです。そういう人なんです。

 

  • この教科で学んだことで一番感動したこと。

最後にこの教科で学んだことで一番感動したことを手短に書いて終わろうと思います。

マニアックすぎるのでここはもう飛ばしてもらって全然おっけーです(笑)

さぁ、なんの話かというと脊椎動物の先祖の話です。

これが一番感動しました。

脊椎動物のとは、僕たち人間を含めた背骨のある生き物のことです。

我らが脊椎動物がどこから来たのか。それは長年の謎でした。

そして、容疑者としてリストアップされたのがこちらの生物。

 

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ホヤです。

ホヤは成体になると海底の岩に張り付き生活しますが、幼生期は下の図のように背骨と尾があり泳いで移動することができます。

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https://depts.washington.edu/fhlk12/links/StudentProjects/Tun.biology.html

ホヤの幼生は、背骨、脳と脊髄からなる中枢神経系、肛門の後ろに伸びる尾など、脊椎動物の特徴を満たしており、ゲノム解析からかなり早い段階の脊椎動物のひとつであることが分かりました。

すごくないですか?

僕らの先祖、これですよ?

それを証明してしまうなんて、科学ってロマンありすぎやしませんか?

そう思うわけです。

詳細は、この論文でお願いします。

すいません、また英語です。。。

https://hal.archives-ouvertes.fr/halsde-00315436/document

 

 

 

はいッ!

というわけで、第四話ではBiology of Animalsという素敵な教科についてご紹介いたしました!

みんな、地獄の4ヶ月間を体験したくなってきたかな?

でも、この経験は僕の根性と動物の知識と興味を大きく飛躍させ、そのおかげで今の僕がいると言っても過言ではないかもしれません。

 

長いのに読んでくれてありがとう。

また、書きます。

第5話でお会いしましょう。