3種類のウォンバット!珍獣の中の珍獣の謎に迫る!
オーストラリアに住んでおりますズングリムックリな有袋類ウォンバット。
同じ有袋類のコアラやカンガルーに比べて若干知名度の下がるこの珍獣も、最近はテレビなどで特集されたりして知ってる人が増えてきたかなと感じております。
そんなじわじわとキテいるウォンバットですが、3種類もいるってご存知でした?
はい、そのとおりです。
これが本記事のテーマでございます!
タイトルは
3種類のウォンバット!珍獣の中の珍獣の謎に迫る!
です!
目次
1.3種類のウォンバット
2.ヒメウォンバット
3.ミナミケバナウォンバット
4.キタケバナウォンバット
5.大事なメッセージ
1.3種類のウォンバット
それではご紹介させていただきましょう!
ドンッ!
上から順番に、ヒメウォンバット (Common wombat)、ミナミケバナウォンバット (Southern hairy-nosed wombat)、キタケバナウォンバット (Northern hairy-nosed wombat)でございます!
さぁ、皆さんがお会いしたことのあるウォンバットはどれかなァ?
御覧の通り見た目は結構バラバラ。
その名の通り、ケバナウォンバットは鼻が毛で覆われているのに対し、ヒメウォンバットはイヌのように鼻に毛は生えておらずBare-nosed wombat(むき出しの鼻)とも呼ばれております。
大きさはだいたい、ヒメウォンバットは35㎏、ミナミケバナウォンバットは26㎏、そしてキタケバナウォンバットは40㎏になります。
みんなデカい(笑)
生息地も皆さん割とバラバラ。
ヒメウォンバットはメルボルンのあるビクトリア州からシドニーのあるニューサウスウェールズ州、そしてタスマニア州と広―く分布しているのに対し、ミナミケバナウォンバットの生息地はアデレードのある南オーストラリア州の限られた地域に点在しているのみです。
キタケバナウォンバットに限っては2つの小さな個体群がクイーンズランド州に残っているのみで、絶滅が危惧されております。
そんな彼らの特徴をね、ビシッと個別におさらいしていこうと思います!
2.ヒメウォンバット (Common wombat: Vombatus ursinus)
きっと一番馴染みのある種類がこのヒメウォンバットではないでしょうか。
体調は約1m、体重は30㎏以上。
身体を固い毛皮で覆われており、その色は銀、黒、茶色と様々。
草原、森林、雪山、浜辺と多くの環境に非常にうまく適応し、がんばって生きていらっしゃいます。
オーストラリアで「野生のウォンバットが見てみたい!」という方は
‐NSW州 Kangaroo Valley
‐Vic州 Wilsons Promontory National Park
‐Tas州 Maria Island National Park &Lake St. Clair National Park
ここらへんに行けば恐らくほぼ確実に見られると思います。
「でもォ、オーストラリアに行かないと見られないんでしょう?」
と思ったそこのあなた。
ご安心ください。
日本では長野県の茶臼山動物園と大阪府の五月山動物園で合計6頭が飼育されております。
あ、ちなみに僕の研究で扱っているのもこの種類です。
「一般的」という意味の「Common」が付けられていますが、開発による生息地の減少や交通事故や疥癬(かいせん)という病気の流行で減少している個体群もあるため、近年は「むき出しの鼻」という「Bare-nosed wombat」という名前を定着させようと僕ら専門家は努めております。
そうすることでヒメウォンバットは「どこにでもいる一般的な動物」という世間の印象を変えられるかもしれないからです。
ヒメウォンバットについては過去記事で引かれるほどに語りまくっているのでぜひ読んでみてください。
wombat-suki-life.hatenablog.com
3. ミナミケバナウォンバット (Southern hairy-nosed wombat: Lasiorhinus latifrons)
3種類の中で一番小さいミナミケバナウォンバット。
その名の通り、オーストラリア南部の南オーストラリア州の乾燥地帯に生息していて、鼻が毛で覆われているウォンバットです。
体調は1m弱、体重は平均26㎏ほどで、黒みがかった銀色の柔らかい毛で覆われています。
僕が言うのもあれですが、かなりのブサカワ系の顔をしていらっしゃいます。
僕はまだ野生個体は見たことないのですが、僕の元上司であるタスマニア大学のスコット・カーバー博士が実際にフィールドワークに行った際は「食べ物なんてこれっぽちも無さそうな砂漠に住んでて引いた」と言ってました。
その言葉の通り、子供は乾季を生き延びられず死んでしまう場合がよくあるそうです。
しかし、その土地の乾季を生き残れない子供なら必要ないのです。
子育ては母ウォンバットにとっても重労働。
強い子供を確実に育て自らの遺伝子を後世に残していく、そういった進化を選んだのです。
こちらもヒメウォンバット同様、生息地の減少、交通事故、そして疥癬により個体数の減少が観測されております。
また、家畜やウサギなどの外来種との生存競争も彼らの個体数に大きく影響しているようです。
4.キタケバナウォンバット (Northern hairy-nosed wombat: Lasiorhinus krefftii)
3種の中で最大種のキタケバナウォンバット。
体長1m超、体重は40㎏にも達し、茶色がかった銀色の柔らかい毛皮を持っております。
しつこいようですが、彼らも相当なブサカワ系のお顔でございます。
クイーンズランド州の乾燥した草原でひっそりと暮らしている彼らですが、大変な危機に瀕しているのです。
以前はオーストラリア東部に広く生息していた彼らですが、2003年の調査によると個体数わずか113頭。
数々の保護努力により個体数は若干回復したもの、2016年の記録ではEpping Forest 国立公園に240頭とRichard Underwood自然保護区に10頭が生息しているのみとなっています。
結果として、絶滅危惧種として登録され、地球上で最も珍しい動物のひとつとなってしまいました。
減少の原因は、家畜や外来種との生存競争、野生化したイヌによる捕食、開発と気候変動による生息地減少、山火事による食料の減少などです。
現存するこの2つの個体群を守るために、保護区をフェンスで囲んだり、繁殖方法が研究されたりと、地域と専門家を巻き込んだ計り知れない保護努力が今も行われています。
いかがだったでしょうか!
可愛いウォンバットをたっぷりご紹介しようと書き始めた本記事ですが、人間の活動により数が減少する彼らの悲しい現実をお伝えする形となってしまいました。
しかし、これが現実です。
5.大事なメッセージ
この記事の最後のメッセージとしてひとつ。
オーストラリアに住んでいる人、またはこれから来るかもしれない人に向けてです。
毎年、数多くのウォンバットを含めた動物が交通事故により命を落としています。
もし、道端で倒れている動物を見かけたら、生きていれば「Injured wildlife 地域(Melbourneなど)」と検索し、適切な機関に電話をし指示を受けてください。
もしすでに死んでいた場合は、その動物に「ポケット」があるかを確認してください。
交通事故によりお母さんが命を落としても、ポケットの中の子供は生きていることがよくあります。
なので、できれば手袋をして、ポケットの中を確認してください。
もし、子供がいれば先ほどの「Injured Wildlife」のとこに電話してください。
そして何よりも、動物が活発な朝方や夕方や夜は運転しない。
するんであればゆっくりと。
これだけで多くの動物の命、あなたの車、そしてあなたの命も守ることができるかもしれないのです。
長くなりましたが、最後まで読んでくれてありがとう!
また、お会いしましょう。